我らが隣人の犯罪 宮部みゆき

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概要

 宮部みゆきさんが駆け出しの頃の短編だそうです。


 これだけの作品を作り上げた人の始まりとはどういうものか?そういうとこに惹かれて読んだ作品です。どういう順番で書籍化とか初だしとかがされたのかが良くわかりませんが、読んだ本には4つの短編が掲載されていました。


  • 我らが隣人の犯罪
  • サボテンの花
  • この子誰の子
  • 祝・殺人
  • 気分は殺人志願(スーサイド)


 本の最後にどの作品がいつ発表されたかとい情報は記載されていました。それがどういう意味でどういう形なのかとか経緯までは分からないので複雑な出版の世界の日付情報を理解しきる作業はしませんでした。でも時期の順番に読むなら、我らが…、この子…、気分は…、サボテンの…、祝…、の順番に読むのが宜しい。


 我らが隣人の犯罪


 何とか購入した都内のタウンハウスの真ん中にあたる家を、舞台にした物語です。タウンハウスは2階建くらいの低層で横につながっている様な一軒家です。共有の庭や敷地があるのが特徴です。横がつながっていて敷地もしっかり分かれているのはテラスハウスといいます。某番組のせいでテラスハウスときくと共同生活をイメージしますが、建築用語としては誤った認識を生みかねないものらしい。


 主観となるのはタウンハウスを買った夫妻の長男。小学校高学年。妹も居て小学生低学年くらい。


 何でも家を買ったのは良かったのだけど隣が迷惑な人だった。ペットを飼っていて、これが一日中鳴き散らかすほど煩く、一家の悩みの種になっていた。


 ある日、叔父さんが来た時にこの問題を解決するべく、隣の家の犬を無きものにする計画を思いつき、実行に乗り出す。


 その計画の中で隣人の犯罪を見つけてしまうのだが、バレれば自分達の罪はもっと重いものになり兼ねない。完全犯罪を成し遂げたならば、一家に平和がそして世の中の秩序が正される。


 犬を無きものに出来るのか!そして隣人の犯罪はどうなる!


 という話。

感想

 50ページ程度の短い話だけど、ワクワクを共有してくれる話だと思った。どうなるんだこの話。って言う誰も経験したことのない新しい世界観を生み出しながらもミステリーの様なハラハラさせる展開が同居していて斬新なお話。いや、これは描けない。と思わされた。


 現実にこう言う隣りが迷惑な人ってことはあったとしても、これをどうこうして見ようって言う話だけでも面白いのに、そこへ来ての隣人の犯罪そして主人公らが今まさに手に染めようとしている犯罪。そんなんしたらあかんやろって言う流れの中に緻密さがある。なんていうか普通はうまくいかないようなことですね。でもそれを可能にしようとする書き手の魔力がある。これならおもしろいから良いでしょ的なね。やっぱ宮部さんって人は変な頭の人だなと再確認できたお話になりました。こんな話に緻密なプロットがあって登場人物の感情が現代の日本の悩みを代表するようなもので共感を誘う。


 面白いものを描く人の助走ってのはこらくらいのものは当たり前っていうね。そんな感じです。流石です。

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我らが隣人の犯罪

 

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