「AP過去問 令和7年度春期 午後 問2 経営戦略」の版間の差分

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== '''令和6年度秋期 午後 問2 経営戦略(AIプロンプト向け)''' ==
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■コーヒーチェーン店の成長戦略に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。


 Q社は、コーヒーチェーン店を運営している。喫茶店業態に進出して以来、落ち着いた空間を提供することで急速に店舗を増やし、現在は全国に店舗を展開している。しかし、ここ3年は、経営環境の変化によって成長が鈍化しており、不採算店も増えている。Q社の経営企画、マーケティング及び人事を統括するR常務は、この状況に危機感を抱き、利益を伴う成長戦略を策定するために、経営企画部のS課長をリーダーとする戦略策定チームを編成した。なお、S課長は、店舗業務の標準化を推進する店舗統括本部の課長も兼務している。
== '''令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(AIプロンプト向け)''' ==
■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。


 Q社は、“おいしいコーヒーでゆっくりくつろげる喫茶店”というブランドを掲げ、交通至便な立地に店舗を構え、店内には仕切りがついたテーブル席を設けるなど、設備投資に注力してきた。Q社の利益は2回以上来店したことのあるリピート客を含む延べ来店客数に占めるリピート客数の割合であるリピート率も新規来店客数も低下していた。
 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。


 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。


[Q社と取り巻く環境]


 Q社では、従前から、顧客満足度調査と従業員満足度調査を行っている。そこで、S課長は、戦略の立案に当たり、顧客の視点及び従業員の視点で分析を行った。
〔D社の成長戦略の振返り〕


 まず顧客の視点で経営環境を分析した。
 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。


・近年、持続可能な開発目標(SDGs)で定められた目標の一つである“持続可能な消費と生産パターンを確保する”への理解が進むに従い、環境や倫理を重視する製品やサービスを購入するという意識がZ世代の消費者の間で高まっている。Q社はこのような高い社会意識をもった消費者を取り込めていない。


・競合コーヒーチェーン店(以下、競合店という)が新規出店した近隣のQ社の店舗では、来店者が急激に減少している。競合店は、コーヒーの淹れ方をマニュアル化して全従業員を定期的に教育したり、社外の講師を呼んで接客スキルやセルフリーダーシップのスキルを高める研修を実施したりするなど、従業員育成への投資を重視している。
 図1 成長マトリクス ここから


・Q社は、有機農法で栽培するなど、環境に配慮した生産者から直接調達した高品質なコーヒー豆を使っていて、味や香りが良いコーヒーに定評があった。ただし、最近の顧客満足度調査では、“店によってコーヒーの味にばらつきがある”、“味や香りが以前よりも落ちている”、といった顧客からの声が寄せられている。
<div><div class="table-container"><div class="table-header"><span class="table-title">図1 成長マトリクス</span><span class="table-unit"></span></div>


<table border="0" style="border-collapse: collapse;border-style: solid">


 S課長は、定評があるコーヒーの安定した提供や、ゆっくりくつろげる喫茶店としての接客といった、顧客へのサービス品質を向上させる必要があると分析した。
<tr>


  <td align="center" style="border: 0px;"></td>


 次に、S課長は、従業員の視点で経営環境を分析した。
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>


・各店舗は店長をリーダーとする一つのチームとして運営されている。店長が部下にコーヒーの淹れ方や接客スキルなどを指導している。しかし、顧客が満足する品質のサービスを提供できるように部下を育成することまではできていない。全て店長の責任で部下の育成を行った上で、顧客が満足する品質のサービスを提供することには限界がある。
  <td align="center" colspan="2" style="border: 2px solid; width: 5em;">製品サービス</td>


・従業員はコーヒーを淹れるスキルを高めたいと思ったり、接客の仕方を改善しようとしたりしているが、店長に相談したくても、なかなか対応してもらえない。その結果、不満をもって辞めてしまう従業員が増え、従業員の定着率が低下してきている。
</tr>


・店舗統括本部の責任者、同僚の店長、店舗内の部下によって店長の360度評価を実施した結果、全般的に、店長の自己評価は高いが、部下からの評価はそれほど高くなく、両者の評価には大きなギャップがあった。
<tr>


  <td align="center" style="border: 0px;"></td>


 S課長は、これらの経営環境分析の結果、顧客へのサービス品質の低下には、従業員のスキルの不足と従業員の定着率の低下とが関連するのではないかと考えた。さらに、S課長は、従業員のスキル及び定着率について分析し、次のことがわかった。
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>


・顧客へのサービス品質が高いチームは、従業員満足度が高く、それによってチームメンバーがやる気をもって自律的にスキルの向上を図っており、また、チームメンバーの定着率が高いという共通の特性がある。
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">既存</td>


・この特性を満たすためには、店長が、部下にたいして共感することで、質問・相談しやすい環境を作ることが必要である。
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">新規</td>


</tr>


[成長戦略の策定]
<tr>


 S課長は、これまでの分析の結果を基に、成長戦略の基本方針を次のとおり定めた。
  <td align="center" rowspan="2" style="border: 2px;">市場</td>


・成長戦略を実現するために重点的に取り組むべきCSF(Critical Success Factors:重要成功要因)とその因果関係を明確にする。これまでの分析の結果から、Q社の成長につながるCSF間の因果関係を、図1のQ社サービスプロフィットチェーンにまとめた。その上で、働きやすい環境や人材育成制度の充実など、従業員が会社から受けるサービスの良さを表す“自社内のサービス品質”の向上を図る。
  <td align="center" style="border: 2px;">既存</td>


  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第1象限</br&gt市場浸透戦略</td>


図1 Q社のサービスプロフィットチェーンここから
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第2象限</br&gt製品開発戦略</td>


図における捕捉・( )で1つの項目を表します。・(・( )と・( ))のように項目がネストすることもあります。
</tr>


従業員に関するCSF間の因果関係に属するモノここから
<tr>


・(自社内のサービス品質)から・([a])へ、・([a])から・(・(従業員定着率)と・(従業員のスキル))へ
  <td align="center" style="border: 2px;">新規</td>


従業員に関するCSF間の因果関係に属するモノここまで
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第3象限</br&gt市場開拓戦略</td>


・(・(従業員定着率)と・(従業員のスキル))から・(顧客へのサービス品質)へ
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第4象限</br&gt多角化戦略</td>


顧客に関するCSF間の因果関係に属するモノここから
</tr>


・(顧客へのサービス品質)から・([b])へ、・([b])から・(顧客ロイヤルティ)へ、
</table>


・(顧客ロイヤルティ)から・(・(企業の成長)と・(収益の向上))へ
</div>


顧客に関するCSF間の因果関係に属するモノここまで
</div>


・(・(企業の成長)と・(収益の向上))から・(自社内のサービス品質)に戻る
 図1 成長マトリクス ここまで


図1 Q社のサービスプロフィットチェーンここまで


 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張してきたことを再認識した。


・持続可能な成長を目指し、また、顧客のロイヤルティを高めるために、ブランドを再構築する。新たに、“<u>①私たちは、高い社会意識をもって、厳選された生豆と熟練の技術で淹れる香り深いコーヒーを提供します。</u>”とブランドを定める。
・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。


・“ブランドの再構築”によって、自社の強みを生かし、弱みを補完して、競合店との差別化を図る。また、“初めて来店してから、店に来店しなくなるまでの [c] ”を表すLTVを向上させることで、採算性を改善する。
・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。




 S課長は、このサービスプロフィットチェーンに基づいて、従業員の定着率の改善とスキルの向上のためには、[a] を高める必要があり、さらにそのためには自社内のサービス品質の改善が必要であることをR常務に報告した。また、S課長は、ゴールである“利益を伴う成長”の実現を目指す成長戦略の進捗を図るKPIとして、Z世代の来店客数と、[d] を設定することにした。
 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、[ a ]効果が生まれていた。




[Q社内のサービス品質の改善]
〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕


 S課長は、自社内のサービス品質を改善するため、店長への研修を実施することにした。研修の内容は、店長の360度評価の結果を基に、店長に対して [e] に気付かせ、行動改善につなげるものとし、部下との対話の場面を想定した次の具体的な演習を行う。
 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。


・店長は部下に対して“教える”、“アドバイスする”ことはせず、“問いかけて聴く”という対話を重視する。
(1) 外部環境


・店長は部下に対する [f] を示すことで、部下から様々な考え方や行動の選択肢を引き出し、自律的な行動を促す。
・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。


・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。


 S課長は、ブランドの再構築の活動として、再教育を全従業員に対して行うことにした。この再教育に当たって、S課長は、<u>②店舗統括本部として重点的に取り組むべき施策</u>があると考えた。また、ブランドの再構築への投資に加えて、人的資本を強化する新たな投資計画を策定した。
・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。


 R常務は、この報告を受け、“君の策定した戦略はよく考えられていて、納得できた。そのアプローチは本当に良いと思う。”とS課長に [f] を示した上で、すぐに経営会議に付議し、成長戦略を推進することを約束した。
・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。


(2) 内部環境


設問1 [成長戦略の策定]について答えよ。
・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。
:(1) 図1及び本文中の [a] 、図1中の [b] に入れる適切な字句を、本文中の字句を用いて、それぞれ8字以内で答えよ。
:(2) 本文中の下線①について、S課長が新たにブランドを定めた背景となる要因は何か。機会と強みの観点からそれぞれ20字以内で答えよ。
:(3) 本文中の [c] に入れる適切な字句を15字以内で答えよ。
:(4) 本文中の [d] に入れる適切な字句を8字以内で答えよ。


設問2 [Q社内のサービス品質の改善]について答えよ。
・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。
:(1) 本文中の [] に入れる適切な字句を20字以内で答えよ。
 
:(2) 本文中の [] に入れる適切な字句を3字以内で答えよ。
・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。
:(3) 本文中の下線②について、店舗統括本部が、再構築したブランドを考慮して重点的に取り組むべき施策を、本文中の字句を用いて25字以内で答えよ。
 
・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。
 
・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。
 
・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。
 
 
 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、[ b ]と[ ]との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。
 
 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、&lt;u&gt;②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業&lt;/u&gt;は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。
 
 
〔多角化戦略の検討〕
 
 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される&lt;u&gt;③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。&lt;/u&gt;B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる&lt;u&gt;④安定成長の実現に寄与できる&lt;/u&gt;と考えた。
 
 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。
 
・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。
 
・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。
 
・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との[ a ]効果が期待できる。
 
・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。
 
・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。
 
 
 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。
 
・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。
 
・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として[ d ]することを検討する。
 
・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、&lt;u&gt;⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。&lt;/u&gt;
 
 
 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。
 
設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。
 
(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。
 
(2) 本文中の[ a ]に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。
 
設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。
 
(1) 本文中の[ b ]、[ c ]に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。
 
解答群
 
ア 機会
 
イ 脅威
 
ウ 強み
 
エ 弱み
 
(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。
 
設問3〔戦略の検討〕について答えよ。
 
(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。
 
解答群
 
ア 集成型多角化戦略
 
イ 集中型多角化戦略
 
ウ 垂直型多角化戦略
 
エ 水平型多角化戦略
 
(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。
 
(3) 本文中の[ ]に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。
 
(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。


 
 


== '''令和6年度秋期 午後 問2 経営戦略(問題原文)''' ==
== '''令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(問題原文)''' ==
■コーヒーチェーン店の成長戦略に関する次の記述を読んで、設問に答えよ。
■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。
 
 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。
 
 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。
 
 
〔D社の成長戦略の振返り〕
 
 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。
 
 
<div align="left"><div align="left" style="display: inline-block;"><div style="width: 100%; text-align: center;">図1 成長マトリクス</div>
<table border="0" style="border-collapse: collapse;border-style: solid">
<tr>
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>
  <td align="center" colspan="2" style="border: 2px solid; width: 5em;">製品サービス</td>
</tr>
<tr>
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>
  <td align="center" style="border: 0px;"></td>
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 15em;">既存</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 15em;">新規</td>
</tr>
<tr>
  <td align="center" rowspan="2" style="border: 2px solid;">市場</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">既存</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">第1象限</br>市場浸透戦略</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">第2象限</br>製品開発戦略</td>
</tr>
<tr>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">新規</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">第3象限</br>市場開拓戦略</td>
  <td align="center" style="border: 2px solid;">第4象限</br>多角化戦略</td>
</tr>
</table>
</div>
</div>
 
 
 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、<u>①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張</u>してきたことを再認識した。


・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。


 Q社は、コーヒーチェーン店を運営している。喫茶店業態に進出して以来、落ち着いた空間を提供することで急速に店舗を増やし、現在は全国に店舗を展開している。しかし、ここ3年は、経営環境の変化によって成長が鈍化しており、不採算店も増えている。Q社の経営企画、マーケティング及び人事を統括するR常務は、この状況に危機感を抱き、利益を伴う成長戦略を策定するために、経営企画部のS課長をリーダーとする戦略策定チームを編成した。なお、S課長は、店舗業務の標準化を推進する店舗統括本部の課長も兼務している。
・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。


 Q社は、“おいしいコーヒーでゆっくりくつろげる喫茶店”というブランドを掲げ、交通至便な立地に店舗を構え、店内には仕切りがついたテーブル席を設けるなど、設備投資に注力してきた。Q社の利益は2回以上来店したことのあるリピート客を含む延べ来店客数に占めるリピート客数の割合であるリピート率も新規来店客数も低下していた。


 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、<span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">a</span> 効果が生まれていた。


[Q社と取り巻く環境]


 Q社では、従前から、顧客満足度調査と従業員満足度調査を行っている。そこで、S課長は、戦略の立案に当たり、顧客の視点及び従業員の視点で分析を行った。
〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕


 まず顧客の視点で経営環境を分析した。
 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。


・近年、持続可能な開発目標(SDGs)で定められた目標の一つである“持続可能な消費と生産パターンを確保する”への理解が進むに従い、環境や倫理を重視する製品やサービスを購入するという意識がZ世代の消費者の間で高まっている。Q社はこのような高い社会意識をもった消費者を取り込めていない。
(1) 外部環境


・競合コーヒーチェーン店(以下、競合店という)が新規出店した近隣のQ社の店舗では、来店者が急激に減少している。競合店は、コーヒーの淹れ方をマニュアル化して全従業員を定期的に教育したり、社外の講師を呼んで接客スキルやセルフリーダーシップのスキルを高める研修を実施したりするなど、従業員育成への投資を重視している。
・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。


・Q社は、有機農法で栽培するなど、環境に配慮した生産者から直接調達した高品質なコーヒー豆を使っていて、味や香りが良いコーヒーに定評があった。ただし、最近の顧客満足度調査では、“店によってコーヒーの味にばらつきがある”、“味や香りが以前よりも落ちている”、といった顧客からの声が寄せられている。
・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。


・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。


 S課長は、定評があるコーヒーの安定した提供や、ゆっくりくつろげる喫茶店としての接客といった、顧客へのサービス品質を向上させる必要があると分析した。
・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。


(2) 内部環境


 次に、S課長は、従業員の視点で経営環境を分析した。
・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。


・各店舗は店長をリーダーとする一つのチームとして運営されている。店長が部下にコーヒーの淹れ方や接客スキルなどを指導している。しかし、顧客が満足する品質のサービスを提供できるように部下を育成することまではできていない。全て店長の責任で部下の育成を行った上で、顧客が満足する品質のサービスを提供することには限界がある。
・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。


・従業員はコーヒーを淹れるスキルを高めたいと思ったり、接客の仕方を改善しようとしたりしているが、店長に相談したくても、なかなか対応してもらえない。その結果、不満をもって辞めてしまう従業員が増え、従業員の定着率が低下してきている。
・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。


・店舗統括本部の責任者、同僚の店長、店舗内の部下によって店長の360度評価を実施した結果、全般的に、店長の自己評価は高いが、部下からの評価はそれほど高くなく、両者の評価には大きなギャップがあった。
・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。


・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。


 S課長は、これらの経営環境分析の結果、顧客へのサービス品質の低下には、従業員のスキルの不足と従業員の定着率の低下とが関連するのではないかと考えた。さらに、S課長は、従業員のスキル及び定着率について分析し、次のことがわかった。
・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。


・顧客へのサービス品質が高いチームは、従業員満足度が高く、それによってチームメンバーがやる気をもって自律的にスキルの向上を図っており、また、チームメンバーの定着率が高いという共通の特性がある。


・この特性を満たすためには、店長が、部下にたいして共感することで、質問・相談しやすい環境を作ることが必要である。
 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、<span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">b</span> と <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">c</span> との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。


 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、<u>②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業</u>は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。


[成長戦略の策定]


 S課長は、これまでの分析の結果を基に、成長戦略の基本方針を次のとおり定めた。
〔多角化戦略の検討〕


・成長戦略を実現するために重点的に取り組むべきCSF(Critical Success Factors:重要成功要因)とその因果関係を明確にする。これまでの分析の結果から、Q社の成長につながるCSF間の因果関係を、図1のQ社サービスプロフィットチェーンにまとめた。その上で、働きやすい環境や人材育成制度の充実など、従業員が会社から受けるサービスの良さを表す“自社内のサービス品質”の向上を図る。
 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される<u>③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。</u>B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる<u>④安定成長の実現に寄与できる</u>と考えた。


 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。


[[ファイル:APPMQ2 Fig1.png|400px|thumb|none|図1 Q社のサービスプロフィットチェーン]]
・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。


・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。


・持続可能な成長を目指し、また、顧客のロイヤルティを高めるために、ブランドを再構築する。新たに、“<u>①私たちは、高い社会意識をもって、厳選された生豆と熟練の技術で淹れる香り深いコーヒーを提供します。</u>”とブランドを定める。
・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> 効果が期待できる。


・“ブランドの再構築”によって、自社の強みを生かし、弱みを補完して、競合店との差別化を図る。また、“初めて来店してから、店に来店しなくなるまでの <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">c</span> ”を表すLTVを向上させることで、採算性を改善する。
・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。


・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。


 S課長は、このサービスプロフィットチェーンに基づいて、従業員の定着率の改善とスキルの向上のためには、<span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">a</span> を高める必要があり、さらにそのためには自社内のサービス品質の改善が必要であることをR常務に報告した。また、S課長は、ゴールである“利益を伴う成長”の実現を目指す成長戦略の進捗を図るKPIとして、Z世代の来店客数と、<span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">d</span> を設定することにした。


 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。


[Q社内のサービス品質の改善]
・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。


 S課長は、自社内のサービス品質を改善するため、店長への研修を実施することにした。研修の内容は、店長の360度評価の結果を基に、店長に対して <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> に気付かせ、行動改善につなげるものとし、部下との対話の場面を想定した次の具体的な演習を行う。
・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> することを検討する。


・店長は部下に対して“教える”、“アドバイスする”ことはせず、“問いかけて聴く”という対話を重視する。
・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、<u>⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。</u>


・店長は部下に対する <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">f</span> を示すことで、部下から様々な考え方や行動の選択肢を引き出し、自律的な行動を促す。


 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。


 S課長は、ブランドの再構築の活動として、再教育を全従業員に対して行うことにした。この再教育に当たって、S課長は、<u>②店舗統括本部として重点的に取り組むべき施策</u>があると考えた。また、ブランドの再構築への投資に加えて、人的資本を強化する新たな投資計画を策定した。
設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。


 R常務は、この報告を受け、“君の策定した戦略はよく考えられていて、納得できた。そのアプローチは本当に良いと思う。”とS課長に <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">f</span> を示した上で、すぐに経営会議に付議し、成長戦略を推進することを約束した。
(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。


(2) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">a</span> に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。


設問1 [成長戦略の策定]について答えよ。
設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。
:(1) 図1及び本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">a</span> 、図1中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">b</span> に入れる適切な字句を、本文中の字句を用いて、それぞれ8字以内で答えよ。
:(2) 本文中の下線①について、S課長が新たにブランドを定めた背景となる要因は何か。機会と強みの観点からそれぞれ20字以内で答えよ。
:(3) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">c</span> に入れる適切な字句を15字以内で答えよ。
:(4) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">d</span> に入れる適切な字句を8字以内で答えよ。


設問2 [Q社内のサービス品質の改善]について答えよ。
(1) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;">b</span> 、<span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。
:(1) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> に入れる適切な字句を20字以内で答えよ。
 
:(2) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> に入れる適切な字句を3字以内で答えよ。
解答群
:(3) 本文中の下線②について、店舗統括本部が、再構築したブランドを考慮して重点的に取り組むべき施策を、本文中の字句を用いて25字以内で答えよ。
 
ア 機会
 
イ 脅威
 
ウ 強み
 
エ 弱み
 
(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。
 
設問3〔戦略の検討〕について答えよ。
 
(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。
 
解答群
 
ア 集成型多角化戦略
 
イ 集中型多角化戦略
 
ウ 垂直型多角化戦略
 
エ 水平型多角化戦略
 
(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。
 
(3) 本文中の <span style="display: inline-block; border: 2px solid; padding-left: 20px; padding-right: 20px;"></span> に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。
 
(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。


 
 


=='''回答・解説'''==
=='''回答・解説'''==
設問1 (1)図1中のaとbを答える問題ですが、図1はS課長の分析をまとめているので、分析と図とのつじつまを合わせる作業です。aは・(自社内のサービス品質)がaに繋がり、aによって、・(従業員定着率)と・(従業員のスキル)を変化させるものです。
設問1
 
(1)
 
 本文で<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。</span>とあるので、ここがD社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因を縮図した表現になっている。この文章から15字のみで答えとしてまとめます。
 
 
したがって
 
 
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5    10 11       20
 
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
強みになり得るコア技術 の維持</span>(13文字)
</div>
 
 
が答えです。
 
 
 もっと具体的に記述したいところですが、15字なら上記を書くのが精いっぱいですね。
 
(2)


ここは知っていないと答えれない語句が答えでした。


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">
サービス品質が高いチームは、従業員満足度が高く、それによってチームメンバーがやる気をもって自律的にスキルの向上を図っており、また、チームメンバーの定着率が高い</span>


・事業間で生産設備や技術を共用する組合せで生まれる効果


 とあるので、・(サービス品質)→・(従業員満足度)→・(従業員定着率)・(従業員のスキル)という関連を示唆しています。したがって
・新しい市場のヘアケア市場である発毛剤素材が、治療型の医療事業との組合せで生まれる効果


こういうのを相乗効果あるいはシナジー効果と言います。
したがって
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
a 従業員満足度</span>
シナジー</span>(4文字)
</div>
 
 
が答えです。
 
 
 日本語なら2文字もあれば答えれるところですが、あえて5文字以内と聞いているところから、カタカナでの回答を期待していると読み取れます。なのでここは素直にシナジーと書くのがベストだと思います。もちろん、問題では片仮名の指定がないので相乗でも満点だと思います。
 
 
設問2
 
SWOT分析のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)から素材関連市場の「日本の優位性が脅かされつつある」は何か、それに対抗できる「最先端の機能性素材を短期間で開発・製造」は何か。という穴埋めでした。




 が答えです。
・脅かされつつあるとあるのは脅威


・短期間で開発・製造できるのは強みです。


 S課長が「顧客へのサービス品質を向上させる必要性」を指摘しており、これが顧客満足度を高め、最終的に企業成長や収益向上に寄与することを示唆しています。


 また、顧客満足度が高いと、リピート率が上がり、顧客ロイヤルティに直接的な影響を与えるという流れが見られます。したがって
したがって




<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
b 顧客満足度</span>
b 脅威</span>
 


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
c 強み</span>


 が答えです。顧客の視点の分析には直接、記述されていない流れなので、これは難しい部類の問題だと思います。しかし、Q社と取り巻く環境のセクションの最初に顧客満足度と従業員満足度が並べて記述されているので、対比として当てはまるかなと考えが巡らせることができれば答えれたかもしれません。
 
が答えです。
 
 
 bとcは入れ替わっていても良いです。4つから2つ選ぶ問題なので、完全に逆張りすると0点ですが、めったにおこらないことです。ある意味すごい。勘でやっても83.3%は1問以上あたるという問題でした。両方正解するのも、両方はずすのも16.7%という低い確率ではあります。つうか、問題だから、わかっていれば、確率という問題ではないのですけれどね。




(2)
(2)


 市場の背景とその強みを答える問題です。背景が描写されている部分を抜き出してみましょう。
クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業として戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業の戦略を35文字で答える問題です。


🔵Strength(強み:内部環境)
:・新薬の研究開発に関するノウハウ(製薬会社としての実績)


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">
:・特定の疾患に対する知見や実績(既存の製品群・治験実績など)
近年、持続可能な開発目標(SDGs)で定められた目標の一つである“持続可能な消費と生産パターンを確保する”への理解が進むに従い、環境や倫理を重視する製品やサービスを購入するという意識がZ世代の消費者の間で高まっている。Q社はこのような高い社会意識をもった消費者を取り込めていない。</span>


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">
:・優れた人材・研究インフラ・技術力
競合コーヒーチェーン店(以下、競合店という)が新規出店した近隣のQ社の店舗では、来店者が急激に減少している。</span>


🔴 Weakness(弱み:内部環境)
:・新薬開発に時間とコストがかかる


というのが背景ですが、それに対する強みがあるのは、
:・開発成功率の低さ(長期間のリスク)


:・医薬品事業に過度に依存している収益構造(他事業が育っていない)


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">
🟢 Opportunity(機会:外部環境)
Q社は、有機農法で栽培するなど、環境に配慮した生産者から直接調達した高品質なコーヒー豆を使っていて、味や香りが良いコーヒーに定評があった。</span>
:・少子高齢化により再生医療などのニーズが高まっている


:・政府が再生医療を重点分野として支援している(規制緩和・補助)


 という部分です。そうすると機会の方も有機農法が有利には働く背景なので、
:・他社との連携(大学・ベンチャー企業など)で新しい技術を導入しやすい状況


🟠 Threat(脅威:外部環境)
:・ジェネリック医薬品の台頭による利益圧迫


環境や倫理を重視する製品やサービスを購入するという意識がZ世代の消費者の間で高まっている。Q社はこのような高い社会意識をもった消費者
:・海外製薬企業との競争激化


:・厳しい薬価制度、医療費抑制政策


 という部分から20文字を抜き出せばよいです。したがって、


   1   5   10 11      20
 まぁ分析しなくても再生医療事業の戦略だと言っています。そうすると再生医療の製品の開発に関するものは一つしか出てきません。


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
機会:環境や倫理を重視する 社会意識の高まり</span>(18文字)


したがって、


 そして強みは


   1   5   10 11      20
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5    10 11        20


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
強み:環境に配慮した高品質 なコーヒー豆</span>(16文字)
フィルムの劣化を防ぐ 抗酸化技術を応用した</span>


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
再生医療向け製品を開 発する</span>(33文字)


 となります。
21        30 31   35
</div>




 長文の中で背景と強みを探すのは難しい作業です。環境というキーワードに対応する強みと背景があったなぁと問題を読みながら理解できたら答えれたと思います。高度な日本語の理解力の問題ですね。
が答えです。




(3)
 ですが、問題文では発毛剤の方へと流れていきます。


 “初めて来店してから、店に来店しなくなるまでの c”を表すLTVを向上させることで、採算性を改善する。</span>


設問3


 の穴埋めです。LTVはLifeTime Valueのことで、顧客生涯価値のことです。なんの説明もしてくれないので、LTVの意味の理解も少し試されている問題なのかもしれません。ちなみに管理人はLTV?何?って感じでした。顧客の生涯価値を向上させることで採算性を向上させるという意味の語句になります。15字以内です。顧客生涯価値とは、顧客が特定の企業やブランドにおいて、初めて取引を開始してから取引が終了するまでに企業にもたらす収益の総額です。したがって、顧客が生み出す総利益など総利益や利益というキーワードと15字で説明するので、何が生み出す利益のことかを説明するといいと思います。したがって、
 短期開発可能な育毛剤の開発に戦略を変えましたが、新たな市場に参戦するこの戦略を何というかという問題でした。それぞれの戦略の意味は以下のようなものです。




  1   5   10 11 15
*1. 集成型多角化戦略 (Concentric Diversification)
:説明:既存の事業と技術的に関連のある分野への進出。既存事業の知識や技術を活かして、新しい事業を立ち上げる。


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
:具体例:例えば、自動車メーカーが自社のエンジン技術を活かして、バイクや電気自動車の製造に進出する。
c 一人の顧客が生み出す 総利益</span>(13文字)


*2. 集中型多角化戦略 (Concentrated Diversification)
:説明:企業が一つの特定の市場に特化して、複数の事業を展開する。事業範囲を限定して集中して進めるタイプ。


 が答えです。この問題はLTVが何かピンと来ないとダメでその意味をしっかり理解していないといけないものなのでかなり難しい問いだったと思います。
:具体例:例えば、携帯電話メーカーが自社の製品ラインを特化し、関連する周辺技術やアクセサリーを展開する。


*3. 垂直型多角化戦略 (Vertical Integration)
:説明:サプライチェーン上流または下流に進出する戦略。自社の供給元や流通チャネルを手に入れる。


(4)
:具体例:例えば、自動車メーカーが部品を自社で生産するために部品メーカーを買収したり、販売店を直営化するなど。


ゴールである“利益を伴う成長”の実現を目指す成長戦略の進捗を図るKPIとして、Z世代の来店客数と、dを設定
*4. 水平型多角化戦略 (Horizontal Diversification)
:説明:事業が現在扱っていない、異なる分野や市場に進出する戦略。異業種の製品やサービスを提供する。


:具体例:例えば、テレビメーカーが洗濯機や冷蔵庫といった家電製品に事業範囲を広げること。


 の穴埋め問題です。


 この問題では、今までD社は発毛剤の開発はやっていなかったので水平型ともとれますが、ナノテクノロジーの応用での育毛剤というのであれば集中型となります。これがどれくらい育毛剤の開発に関わるかは未知数ですが、問題では応用といっているので、集中型多角化戦略となるでしょう。


 KPIはKey Performance Indicator(重要業績評価指標)のことで、BSC(Balanced ScoreCard)のような財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、成長・学習の視点の4つの区分でバランスよく設定する目標設定と同じようなものです。その目標として何を設定するかという問題ですが、本文中から抜き出すと、顧客満足度という指標と、リピート率という指標が入りそうです。顧客満足度はどちらかというと、違う指標から導き出すものなので、より具体的なリピート率が適切だと考えます。したがって


したがって


  1   5  8


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
d リピート率</span>(5文字)
イ 集中型多角化戦略</span>




 が答えです。5文字で答えよの方が答えやすいのにね。いやらしい問題です。本文中の語句という指定がないので、さらにいやらしいですが、独自の発想で、顧客再来店率とかにしても正解になるでしょう。
が答えです。




設問2
 水平型ともとれなくないので、新しい事業なので水平型でも部分点か満点もありえると思います。今回の試験、どっちともとれるあやふやにしておくところが多い感じします。部分点大放出の予定なのでしょうか?


(1)


 研修の内容は、店長の360度評価の結果を基に、店長に対して[e]に気付かせ
(2)


 という穴埋の問題です。これは問題の本文中にも店長が自身で気づけていない事象が記述にあります。
 安定成長の実現に寄与できる戦略はどのような点で寄与できるかを30文字で答える問題です。ヘアケアの戦略は本文では<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略</span>として挙げられました。なのでこれが答えです。


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">店長の360度評価を実施した結果、全般的に、店長の自己評価は高いが、部下からの評価はそれほど高くなく、両者の評価には大きなギャップがあった。</span>


 とある部分から20字で要約すると良いことがわかります。したがって
したがって、




  1   5   10 11      20
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5    10 11        20


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
e 店長の自己評価と部下 の店長の評価との差</span>(5文字)
事業環境の変化による 事業リスクを分散・軽</span>


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
減する戦略である点</span>(29文字)


 が答えになります。本文中に360度評価というキーワードがあるので、探しやすくはなっていたと思います。高度な日本語文章読解問題だったと言えると思います。
21        30 31   35
</div>




(2)
が答えです。


 店長は部下に対する [f] を示す。あるいはR常務は…S課長に [f] を示した上


 という部分に共通する語句の穴埋め問題です。3文字以内と短い単語が入ることが予想されます。
 ここまで、いずれも見つけるのが難しい語句であるようには感じます。かなりの読解力が要求されますね。


 上司が部下に対して示すもので、これは本文中にも具体的に何かという記述がありますが、問題では本文中からという指示がないので見つけ出すのは難しいかもしれません。自分で考えめぐらした言葉だとある程度の数が存在しそうな答えになります。例えば敬意とか、愛情とか、同意とかね。そういう系統の相手を想う気持ち的な熟語が候補になります。でもどれもしっくりはきません。何かいい表現というか答えに直結する表現はなかったか?本文にそういう表現はなかったかを振り返ることができれば、以下のような部分があったことに気付けるかもしれません。
(3)


 dに入る既存事業の再編の施策を15字で見つける問題です。


 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">この特性を満たすためには、店長が、部下にたいして共感することで、質問・相談しやすい環境を作ることが必要である。</span>
 <span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。</span>とあるので、再編するとしたら映像関連事業ですね。具体的な施策は本文で提案されていないので映像関連事業の再編でいいでしょうね。字余りで、ちょっと心配になりますけど。




 この部分で部下にたいして共感することでと記述があります。したがって
したがって




  1 3
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5    10 11        20


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
f 共感</span>(2文字)
映像関連事業の再編</span>(9文字)
</div>




 が答えです。
が答えです。




(3)
 具体的に売却とか縮小とか書かなくてもよいと思います。再編というぼやけた表現のままで大丈夫でしょう。
 
(4)
 
M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。この戦略について戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内なので、がんばって探せば得点になる問題ですね。外部から調達すると開発期間が不要なので、活動期間の短縮ができるというあたりにふれている文章を探します。そうすると短縮という熟語が使われているのは、<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #ff7f7f 75%); font-weight:bold; ">事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。</span>という部分です。
 


 下線②ブランドを考慮して重点的に取り組むべき施策を25字以内で考える部分ですが、良い豆を使うことや、コーヒーの淹れ方、従業員のスキルアップや店長が部下に共感するだとか、“問いかけて聴く”という対話するとか、部下から様々な考え方や行動の選択肢を引き出し、自律的な行動を促すとか、あるいは高い社会意識をもって、厳選された生豆と熟練の技術で淹れる香り深いコーヒーを提供します。とも言っていますし、競合店がやっている、コーヒーの淹れ方をマニュアル化して全従業員を定期的に教育しているというのも取り組むべき施策と言えます。この長い文章の中でこれだけの施策があって、どれが重点的に取り組むべき施策といえるのかは非常に難しいし25字にまとめるのは至難の業に思えます。結局、競合店がやっている部分に全てが集約されているようにも思えるので、以下のような答えが適切だと思われます。
したがって




1   5   10 11      20
<div style="font-family: 'BIZ UDゴシック', 'Menlo', 'Osaka-Mono';">
1   5    10 11        20


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
コーヒーの淹れ方をマ ニュアル化し従業員を</span>
事業化までの期間短縮</span>(10文字)
</div>
 
 
が答えです。


<span style = "background:linear-gradient(transparent 75%, #7fbfff 75%); font-weight:bold; ">
教育する</span>(24文字)


21 25
 あ、期間の短縮を期間短縮とかずるいことしてるっ!そう思うでしょう。自分もそう思います。普通に考えれば、12文字以内で答えよの問題でしたね。こういう問題を作る人はよくないよね。ね!




 が答えです。他店と同じことをやることが今回の結論になっているように思えます。これでは、他店に追いつくだけで、追い越すことは難しく、豆の良さを最大限に引き出すところだけで経営が改善するとは思えませんが、本文にはここまでしか書かれていないので、これを答えとするしかなさそうです。落ち着いた雰囲気、有機栽培の豆は以前から使ってはいるわけで、これという一手は打ててないように思えます。店の改装でもして落ち着いた雰囲気を向上させたりする努力が必要な気がします。店の雰囲気で入ろうか入らまいか決めるのは多くの人に言えることだと思いますし、その上で、味や値段、回転率で勝負しないといけないと思います。落ち着いた雰囲気も大事ですが、短時間で、落ち着いた感が味わえる内装で、満足のいく味と目玉の一品料理(お菓子系デザート系?パン系)の開発が必要なのではないでしょうか。コーヒーの違いがわかる人ってのは少ないので最低限おいしいと思えるコーヒーの開発も必要です。有機栽培してるからとか、高級な豆を使えばいいってものでもありません。コーヒー店の経営は難しいのです。
 総じていえばやや苦労する構成の問題でした。SWOT分析をはさむあたりが普通にはわかりにくいね。SWOT分析が何かを細かく説明してくれたらもう少し読みやすい問題だったけど、SWOT分析の内容がわかりにくいことによって、この問題の読み解きやすさを複雑にしている。嫌な問題ですね。やだな。


 
 

2025年5月17日 (土) 00:41時点における最新版

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令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(AIプロンプト向け)

■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。

 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。


〔D社の成長戦略の振返り〕

 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。


 図1 成長マトリクス ここから

<div><div class="table-container"><div class="table-header"><span class="table-title">図1 成長マトリクス</span><span class="table-unit"></span></div>

<table border="0" style="border-collapse: collapse;border-style: solid">

<tr>

  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" colspan="2" style="border: 2px solid; width: 5em;">製品サービス</td>

</tr>

<tr>

  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">既存</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">新規</td>

</tr>

<tr>

  <td align="center" rowspan="2" style="border: 2px;">市場</td>

  <td align="center" style="border: 2px;">既存</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第1象限</br&gt市場浸透戦略</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第2象限</br&gt製品開発戦略</td>

</tr>

<tr>

  <td align="center" style="border: 2px;">新規</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第3象限</br&gt市場開拓戦略</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第4象限</br&gt多角化戦略</td>

</tr>

</table>

</div>

</div>

 図1 成長マトリクス ここまで


 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張してきたことを再認識した。

・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。

・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。


 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、[ a ]効果が生まれていた。


〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕

 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。

(1) 外部環境

・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。

・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。

・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。

・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。

(2) 内部環境

・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。

・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。

・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。

・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。

・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。

・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。


 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、[ b ]と[ c ]との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。

 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、<u>②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業</u>は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。


〔多角化戦略の検討〕

 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される<u>③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。</u>B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる<u>④安定成長の実現に寄与できる</u>と考えた。

 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。

・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。

・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。

・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との[ a ]効果が期待できる。

・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。

・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。


 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。

・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。

・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として[ d ]することを検討する。

・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、<u>⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。</u>


 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。

設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。

(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。

(2) 本文中の[ a ]に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。

設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。

(1) 本文中の[ b ]、[ c ]に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 機会

イ 脅威

ウ 強み

エ 弱み

(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。

設問3〔戦略の検討〕について答えよ。

(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 集成型多角化戦略

イ 集中型多角化戦略

ウ 垂直型多角化戦略

エ 水平型多角化戦略

(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。

(3) 本文中の[ d ]に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。

(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。

 

令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(問題原文)

■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。

 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。


〔D社の成長戦略の振返り〕

 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。


図1 成長マトリクス
製品サービス
既存 新規
市場 既存 第1象限
市場浸透戦略
第2象限
製品開発戦略
新規 第3象限
市場開拓戦略
第4象限
多角化戦略


 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張してきたことを再認識した。

・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。

・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。


 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、 効果が生まれていた。


〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕

 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。

(1) 外部環境

・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。

・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。

・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。

・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。

(2) 内部環境

・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。

・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。

・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。

・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。

・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。

・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。


 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、 との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。

 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。


〔多角化戦略の検討〕

 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる④安定成長の実現に寄与できると考えた。

 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。

・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。

・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。

・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との 効果が期待できる。

・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。

・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。


 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。

・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。

・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として することを検討する。

・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。


 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。

設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。

(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。

(2) 本文中の に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。

設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。

(1) 本文中の に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 機会

イ 脅威

ウ 強み

エ 弱み

(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。

設問3〔戦略の検討〕について答えよ。

(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 集成型多角化戦略

イ 集中型多角化戦略

ウ 垂直型多角化戦略

エ 水平型多角化戦略

(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。

(3) 本文中の に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。

(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。

 

回答・解説

設問1

(1)

 本文で競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。とあるので、ここがD社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因を縮図した表現になっている。この文章から15字のみで答えとしてまとめます。


したがって


1   5    10 11       20

強みになり得るコア技術 の維持(13文字)


が答えです。


 もっと具体的に記述したいところですが、15字なら上記を書くのが精いっぱいですね。

(2)

ここは知っていないと答えれない語句が答えでした。


・事業間で生産設備や技術を共用する組合せで生まれる効果

・新しい市場のヘアケア市場である発毛剤素材が、治療型の医療事業との組合せで生まれる効果


こういうのを相乗効果あるいはシナジー効果と言います。


したがって


1   5

シナジー(4文字)


が答えです。


 日本語なら2文字もあれば答えれるところですが、あえて5文字以内と聞いているところから、カタカナでの回答を期待していると読み取れます。なのでここは素直にシナジーと書くのがベストだと思います。もちろん、問題では片仮名の指定がないので相乗でも満点だと思います。


設問2

SWOT分析のStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)から素材関連市場の「日本の優位性が脅かされつつある」は何か、それに対抗できる「最先端の機能性素材を短期間で開発・製造」は何か。という穴埋めでした。


・脅かされつつあるとあるのは脅威

・短期間で開発・製造できるのは強みです。


したがって


b 脅威


c 強み


が答えです。


 bとcは入れ替わっていても良いです。4つから2つ選ぶ問題なので、完全に逆張りすると0点ですが、めったにおこらないことです。ある意味すごい。勘でやっても83.3%は1問以上あたるという問題でした。両方正解するのも、両方はずすのも16.7%という低い確率ではあります。つうか、問題だから、わかっていれば、確率という問題ではないのですけれどね。


(2)

クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業として戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業の戦略を35文字で答える問題です。

🔵Strength(強み:内部環境)

・新薬の研究開発に関するノウハウ(製薬会社としての実績)
・特定の疾患に対する知見や実績(既存の製品群・治験実績など)
・優れた人材・研究インフラ・技術力

🔴 Weakness(弱み:内部環境)

・新薬開発に時間とコストがかかる
・開発成功率の低さ(長期間のリスク)
・医薬品事業に過度に依存している収益構造(他事業が育っていない)

🟢 Opportunity(機会:外部環境)

・少子高齢化により再生医療などのニーズが高まっている
・政府が再生医療を重点分野として支援している(規制緩和・補助)
・他社との連携(大学・ベンチャー企業など)で新しい技術を導入しやすい状況

🟠 Threat(脅威:外部環境)

・ジェネリック医薬品の台頭による利益圧迫
・海外製薬企業との競争激化
・厳しい薬価制度、医療費抑制政策


 まぁ分析しなくても再生医療事業の戦略だと言っています。そうすると再生医療の製品の開発に関するものは一つしか出てきません。


したがって、


1   5    10 11        20

フィルムの劣化を防ぐ 抗酸化技術を応用した

再生医療向け製品を開 発する(33文字)

21        30 31   35


が答えです。


 ですが、問題文では発毛剤の方へと流れていきます。


設問3

 短期開発可能な育毛剤の開発に戦略を変えましたが、新たな市場に参戦するこの戦略を何というかという問題でした。それぞれの戦略の意味は以下のようなものです。


  • 1. 集成型多角化戦略 (Concentric Diversification)
説明:既存の事業と技術的に関連のある分野への進出。既存事業の知識や技術を活かして、新しい事業を立ち上げる。
具体例:例えば、自動車メーカーが自社のエンジン技術を活かして、バイクや電気自動車の製造に進出する。
  • 2. 集中型多角化戦略 (Concentrated Diversification)
説明:企業が一つの特定の市場に特化して、複数の事業を展開する。事業範囲を限定して集中して進めるタイプ。
具体例:例えば、携帯電話メーカーが自社の製品ラインを特化し、関連する周辺技術やアクセサリーを展開する。
  • 3. 垂直型多角化戦略 (Vertical Integration)
説明:サプライチェーン上流または下流に進出する戦略。自社の供給元や流通チャネルを手に入れる。
具体例:例えば、自動車メーカーが部品を自社で生産するために部品メーカーを買収したり、販売店を直営化するなど。
  • 4. 水平型多角化戦略 (Horizontal Diversification)
説明:事業が現在扱っていない、異なる分野や市場に進出する戦略。異業種の製品やサービスを提供する。
具体例:例えば、テレビメーカーが洗濯機や冷蔵庫といった家電製品に事業範囲を広げること。


 この問題では、今までD社は発毛剤の開発はやっていなかったので水平型ともとれますが、ナノテクノロジーの応用での育毛剤というのであれば集中型となります。これがどれくらい育毛剤の開発に関わるかは未知数ですが、問題では応用といっているので、集中型多角化戦略となるでしょう。


したがって


イ 集中型多角化戦略


が答えです。


 水平型ともとれなくないので、新しい事業なので水平型でも部分点か満点もありえると思います。今回の試験、どっちともとれるあやふやにしておくところが多い感じします。部分点大放出の予定なのでしょうか?


(2)

 安定成長の実現に寄与できる戦略はどのような点で寄与できるかを30文字で答える問題です。ヘアケアの戦略は本文では事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略として挙げられました。なのでこれが答えです。


したがって、


1   5    10 11        20

事業環境の変化による 事業リスクを分散・軽

減する戦略である点(29文字)

21        30 31   35


が答えです。


 ここまで、いずれも見つけるのが難しい語句であるようには感じます。かなりの読解力が要求されますね。

(3)

 dに入る既存事業の再編の施策を15字で見つける問題です。

 映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。とあるので、再編するとしたら映像関連事業ですね。具体的な施策は本文で提案されていないので映像関連事業の再編でいいでしょうね。字余りで、ちょっと心配になりますけど。


したがって


1   5    10 11        20

映像関連事業の再編(9文字)


が答えです。


 具体的に売却とか縮小とか書かなくてもよいと思います。再編というぼやけた表現のままで大丈夫でしょう。

(4)

M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。この戦略について戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内なので、がんばって探せば得点になる問題ですね。外部から調達すると開発期間が不要なので、活動期間の短縮ができるというあたりにふれている文章を探します。そうすると短縮という熟語が使われているのは、事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。という部分です。


したがって


1   5    10 11        20

事業化までの期間短縮(10文字)


が答えです。


 あ、期間の短縮を期間短縮とかずるいことしてるっ!そう思うでしょう。自分もそう思います。普通に考えれば、12文字以内で答えよの問題でしたね。こういう問題を作る人はよくないよね。ね!


 総じていえばやや苦労する構成の問題でした。SWOT分析をはさむあたりが普通にはわかりにくいね。SWOT分析が何かを細かく説明してくれたらもう少し読みやすい問題だったけど、SWOT分析の内容がわかりにくいことによって、この問題の読み解きやすさを複雑にしている。嫌な問題ですね。やだな。

 

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