「AP過去問 令和7年度春期 午後 問2 経営戦略」の版間の差分

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   <td align="center" style="border: 2px solid;">第4象限</br>多角化戦略</td>
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2025年5月9日 (金) 16:22時点における版

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令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(AIプロンプト向け)

■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。

 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。


〔D社の成長戦略の振返り〕

 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。


 図1 成長マトリクス ここから

<div><div class="table-container"><div class="table-header"><span class="table-title">図1 成長マトリクス</span><span class="table-unit"></span></div>

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  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" colspan="2" style="border: 2px solid; width: 5em;">製品サービス</td>

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  <td align="center" style="border: 0px;"></td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">既存</td>

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<tr>

  <td align="center" rowspan="2" style="border: 2px;">市場</td>

  <td align="center" style="border: 2px;">既存</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第1象限</br&gt市場浸透戦略</td>

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  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第3象限</br&gt市場開拓戦略</td>

  <td align="center" style="border: 2px solid; width: 5em;">第4象限</br&gt多角化戦略</td>

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 図1 成長マトリクス ここまで


 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張してきたことを再認識した。

・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。

・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。


 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、[ a ]効果が生まれていた。


〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕

 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。

(1) 外部環境

・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。

・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。

・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。

・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。

(2) 内部環境

・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。

・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。

・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。

・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。

・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。

・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。


 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、[ b ]と[ c ]との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。

 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、<u>②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業</u>は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。


〔多角化戦略の検討〕

 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される<u>③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。</u>B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる<u>④安定成長の実現に寄与できる</u>と考えた。

 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。

・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。

・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。

・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との[ a ]が期待できる。

・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。

・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。


 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。

・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。

・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として[ d ]することを検討する。

・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、<u>⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。</u>


 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。

設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。

(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。

(2) 本文中の[ a ]に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。

設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。

(1) 本文中の[ b ]、[ c ]に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 機会

イ 脅威

ウ 強み

エ 弱み

(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。

設問3〔戦略の検討〕について答えよ。

(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 集成型多角化戦略

イ 集中型多角化戦略

ウ 垂直型多角化戦略

エ 水平型多角化戦略

(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。

(3) 本文中の[ d ]に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。

(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。

 

令和7年度春期 午後 問2 経営戦略(問題原文)

■企業の成長戦略に関する次の記述を読んで,設問に答えよ。

 D社は大手の化学品製造・販売会社である。創業初期はフィルムカメラで使用する映像フィルムや医療診断で使用するX線フィルムなどのフィルム事業を展開していた。20数年前に情報記録方式がアナログからデジタルに変わるという事業環境の変化によってフィルム事業の売上高が激減した。事業の危機に直面したD社は、保有技術を軸にして製品・サービス及び市場を抜本的に見直すことによって事業を拡張してきた。

 現在は、素材関連、映像関連、医療関連の3事業分野の市場で様々な製品・サービスを展開している。しかし、D社の経営層は、今後の事業環境の変化に対応できるかどうかを懸念していた。そこで、事業環境の変化によって生じる全社の事業リスクに対応するために、更なる安定成長を目標とする中期事業計画を立案するよう経営企画部のB課長に指示した。


〔D社の成長戦略の振返り〕

 B課長をリーダーとするチーム(以下、戦略策定チームという)は、まず過去20数年間のD社の成長戦略とその結果を振返ることにした。D社では成長戦略を立案する際に、フレームワークとして図1に示す成長マトリクスを用いてきた。このマトリクスは、市場を縦軸に、製品・サービスを横軸にしてそれぞれの軸を既存と新規の領域に分けた四つの象限の戦略から成る。図1において、振返りの開始時点における既存市場をフィルムカメラ関連市場及び医療診断市場とし、既存製品・サービスを映像フィルム及びX線フィルムとした。


図1 成長マトリクス
製品サービス
既存 新規
市場 既存 第1象限
市場浸透戦略
第2象限
製品開発戦略
新規 第3象限
市場開拓戦略
第4象限
多角化戦略


 戦略策定チームは、D社が第1象限の戦略に取り組みながら、次のとおり、①第2象限及び第3象限の戦略を用いて事業を拡張してきたことを再認識した。

・第2象限では、医療診断市場において、X線フィルムとデジタル画像処理の技術を応用し、新たに医療用画像診断ネットワークサービスを立ち上げた。

・第3象限では、新たな素材関連市場において、映像フィルムの製造で培った技術を応用し、フィルム、シート、膜の形状をした産業用液晶フィルムなどの素材を製造して他メー力一に供給する事業を展開した。


 これらの成功事例では、D社内の事業間で生産設備や技術を共用することによって、[ a ]効果が生まれていた。


〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕

 過去の成長戦略を把握した戦略策定チームは、次にのD社に関する外部環境及び内部環境を整理して分析した。

(1) 外部環境

・素材関連市場では、日本は高い技術力によって個々の市場規模は小さいが海外市場で高いシェアを占めている。しかし、国際的な競争激化や顧客ニーズの多様化といった事業環境の変化によって、日本の優位性が脅かされつつある。

・映像関連市場では、情報記録方式がアナログからデジタルに変わって様々な映像媒体が出てきているが、技術開発の中心は媒体関連からストリーミングやXR(クロスリアリティ)などのコンテンツ作成・活用関連に移行している。

・医療関連市場では、新しい医療手法が注目され、中でも再生医療市場の拡大が見込まれる。国の主導で再生医療の研究開発と普及促進が行われている。

・世界有数の長寿国になった日本で安心して豊かに暮らすために、健康意識やエイジングケア意識が更に高まっていくと予想される。アクティブシニア層の増加や、中年齢層及び女性層の需要拡大によって、発毛剤などの機能的なヘアケア市場は大きな成長が期待できる。

(2) 内部環境

・前年度のD社全体の売上高に占める事業分野別の売上高の割合は、素材関連事業が5割、映像関連事業が2割、医療関連事業が3割であった。

・素材関連事業の売上高は、従来では量産が困難であった特性や機能を備えた特殊な素材(以下、機能性素材という)の海外市場を含めた取扱高の増大が寄与し、堅調に拡大している。また、自社の最適化された生産プロセスを活用することによって、最先端製品に欠かせない機能性素材を短期間で開発・製造し、顧客ニーズの多様化に対応できている。

・映像関連事業の売上高は、ここ数年間は横ばいで、他の事業分野の成長によってD社全体の売上高に占める割合は減少している。有望なコンテンツ作成・活用関連事業は行っていないので、現時点ではこれ以上の事業拡張は見込めない。

・ 関連事業の売上高は、医療用画像診断ネットワークサービスなどの診断型の事業が大半を占め、ここ数年の伸びは鈍化傾向にあるものの、今後も市場は拡大するとみられ、D 社の市場シェアから見ると成長の余地がある。

・D社は現在に至るまで長年にたって、競合他社と差別化できて事業を進める上で強みになり得るコア技術を維持してきた。現在のコア技術を応用した将来有望な新製品として、フィルムの劣化を防ぐ抗酸化技術を応用した再生医療向け製品、ナノテクノロジーを応用した高機能な発毛剤が挙げられている。

・D社は映像関連事業での実績から全国的に企業知名度が高い。


 戦略策定チームは、これらを基にSWOT分析及びクロスSWOT分析を行った。クロスSWOT分析では、SWOT分析で抽出した外部環境及び内部環境におけるプラス要因及びマイナス要因の組合せをマトリクスで表し、複合的な視点で戦略を立てた。今回の環境分析の結果から一例を挙げると、素材関連市場での日本の優位性が脅かされつつあるとき、[ b ]と[ c ]との組合せによる戦略を用いることによって、他社と差別化できる最先端の機能性素材を短期間で開発・製造する施策につながる。

 戦略策定チームは、D社が成長をるために、今後も安定成長を続けるために、事業環境の変化による事業リスクを分散・軽減する戦略について図1の第4象限に踏み込んで検討した。その結果、②クロスSWOT分析における機会と強みとの組合せによって生まれる戦略から導びかれる再生医療事業は、従来の診断型の事業とは一線を画す治療型の新たな事業として位置づけられ、将来有望視できると考えた。事業化への大きな課題として、投資資金の確保、及び本格的な事業化までの期間の短縮を挙げた。B課長は、この検討結果を経営層に報告したところ、新たな事業化にいついては多角化戦略を用いて検討を継続するよう指示を受けた。


〔多角化戦略の検討〕

 その後の検討を経て、戦略策定チームは、再生医療事業と比較すると事業化までに要する期間が短いと予想される③新たなヘアケア市場への事業参入を多角化戦略の最初のターゲットに設定した。B 課長は、D社が発毛剤を主力製品とするヘアケア事業を立ち上げ、ここから多角化戦略を推し進めることによって、事業拡張が見込めるだけでなく、経営層が望んでいる④安定成長の実現に寄与できると考えた。

 戦略策定チームは、ヘアケア事業の実現に関する分析を次のように整理した。

・クロスSWOT分析から導き出される、機会と強みとの組合せによる戦略と合致する。

・ヘアケア市場は成熟している。しかし、D社が得意とする機能性に特徴を持つ発毛剤などの製品を揃える強力な競合他社は少ない。D社の高い企業知名度を生かせるので、市場参入の可能性はある。

・発毛剤は医療品の分類に属しており、今後の治療型の医療事業との[ a ]が期待できる。

・新規事業の実現には新製品の開発推進、製造プロセスの整備、関連する事業のノウハウの習得、及び経営資源の獲得に要する多額の投資資金と長期の時間が必要である。一方で、事業環境の変化は急速で対応スピードを最も重視する必要がある。

・新規事業が十分に成長するまでには期間を要するので、その間は既存事業も一定の成長を維持する必要がある。


 また、戦略策定チームは、有限であるD社の経営資源の活用に関して次のとおり考えた。

・将来需要減退が進行する既存事業は選択と集中による事業再編を進め、将来性のある新規事業に資金をはじめとする経営資源を再配分する。

・既存事業では、成長が見込めてD社の優位性が維持できる素材関連事業と医療関連事業に経営資源を集中する。製品開発、M&Aなどの新規事業立上げの投資資金を確保するために、既存事業の再編の施策として[ d ]することを検討する。

・D社がもっていない技術や事業ノウハウ、設備・人・組織などの経営資源は、事業特性や将来性を見極めながら、⑤M&Aなどを通じて外部から獲得することで補う。


 B課長は、ヘアケア事業の立上げの提案を盛り込んだ中期事業計画を経営層に報告したところ、具体的な検討を更に進めるよう指示を受けた。

設問1 〔D社の成長戦略の振返り〕について答えよ。

(1) 本文中の下線①について、D社が過去にこれらの戦略を用いて事業を拡張させてきた内部環境上の最も重要な成功要因は何か。本文中の字句を用いて15字以内で答えよ。

(2) 本文中の[ a ]に入れる適切な字句を5字以内で答えよ。

設問2 〔成長戦略策定のための環境分析とクロスSWOT分析〕について答えよ。

(1) 本文中の[ b ]、[ c ]に入れる適切な字句を解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 機会

イ 脅威

ウ 強み

エ 弱み

(2) 本文中の下線②­について、戦略策定チームが行ったクロスSWOT分析における事業を戦略を、本文中の❝外部環境❞及び❝内部環境❞に記載された字句を用いて35字以内で答えよ。

設問3〔戦略の検討〕について答えよ。

(1) 本文中の下線③について、D 社がヘアケア事業を立上げて多角化する戦略はどれか。適切なものを解答群の中から選び、記号で答えよ。

解答群

ア 集成型多角化戦略

イ 集中型多角化戦略

ウ 垂直型多角化戦略

エ 水平型多角化戦略

(2) 本文中の下線④について、戦略は、D社の定成成長の実現に対してどのような点で寄与できるか。30字以内で答えよ。

(3) 本文中の[ d ]に入れる既存事業の再編の施策を15字以内で答えよ。

(4) 本文中の下線⑤について、戦略策定チームは内部調達ではなく外部から補うことでどのようなメリットを期待したか。本文中の字句を用いて10字以内で答えよ。

 

回答・解説

 

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